・再開第二号(不定期です) 『今ここ』 藤田 毅
・多くの人が過去にとらわれるものです。 あの時ああしておけば、こうしておけば、ということはよく考えますよね。 しかも大抵は今がうまくいっていないからでしょう。 でも、後悔先に立たずと言いますが、人生には何とも無念なことが多く、何度も繰り返します。 これぞまさに、後悔先に立たずならぬ、後悔後を絶たず・・・。 しかし過去を振り返って、悔しい思いを繰り返しても、残念ながら解決策には至らない事が多いのです。 でもそこから目が離せないのは、悔しさや怒りといったエネルギーが大変大きな強さを持っているからでもあります。 それらに引きずられ、過去の出来事から目線を外せなくなってしまうのです。 タイムマシンもデロリアンも持たない私達は、この無情にどう向き合えば良いでしょうか? 過去にさかのぼってやり直すこともできないし、予言者でもないから未来も分からない。結局、私達ができるのは、「今何をするか」という事だけです。 今できることをやって、その積み重ねが未来を作っていくのですから、私達が見つめるべきなのは、過去ではなく、今なのだということになります。 過去に失敗した事があるなら、繰り返さないで済む言動を今するべきでしょうし、自分には何もないし何もできないと思うなら、その状況の中でもできることを今探すべきでしょう。 今やれることを精一杯やる、それが私達にできる唯一の事なのです。 とは言っても、何も建設的な、素晴らしいことを今しなさいという訳でもありません。 今、昼寝するのがベストだと思うなら、昼寝をするのが良いのです。 誰かの話を聞いてあげるべきだと思うのならば、そうすれば良いのです。 要は、今やれることの中で、最もふさわしいと思うことを探しましょうということです。 「今ここ」に着目するのは、アドラー精神医学であり、認知療法の基本であり、マインドフルネスの実践です。 今を大切にしなくては、これから先もまた後悔して過ごすことになるかもしれません。 あなたの今は大きな可能性を持っています。何とでもなるし、どのようにも未来を作れます。いやいや、自分にはそんな未来はないよとおっしゃる方は、自分自身で今を否定してしまっているのかもしれませんよ。 未来は誰にも分かりません。 どんな展開が待っているか分かりません。 しかし今の積み重ねであることだけは真実です。 ならばせめて、その今というパーツをできるだけ満足いくものにしていこうじゃないですか。 そこで、そのための実践として「良いこと日記」をお勧めします。 1日の終わりに、その日1日で良かったと思えることを日記にしていきます。 もちろん、大きなことでなくてもいいですから、1日一つは良いことを見つけて記録していきます。 嬉しいことがあれば、それを記録して、何もなければ、何とか今日1日が無事に終わったことを良かったと書きましよう。 ご飯が美味しかった、空が綺麗だった、テレビが面白かったなど、何でも良いのです。 そして頃合いを見て、それを読み返してみましょう。あんな事もこんな事も良いこととして記載されている日記は、きっとあなたの心を優しくしてくれることでしょう。 では、嫌なことはどうするか。 それは記録に残すことはありません。 捨てても良いようなメモなどに、嫌なことや腹の立ったことを書きなぐり、思いっきりビリビリに破いて捨ててしまいましょう。 肝腎なのは、嫌なことは残さず捨ててしまうことです。 どうせなら怒りや不満を込めてビリビリに破り捨ててやりましょう。 今できることを見つめ、少しでも手がけ、自分のこれからはまだ何も決まっていないことを理解してください。 明日の自分は、今日の自分が作っていくのです。 今日がダメでも、良いことの一つをひねり出し、明日はきっとまた良いことがあると信じて、今夜は休みましょう。 皆さんの未来は、皆さん自身が作り出すものです。
.........................................................・2017年4月 ミニこぶし便り。 再開第一号(不定期です) 『うつ病の経過』 藤田 毅
・うつ病は、名前だけは十分に知られるようになりました。 しかし、そのプロセスはまだ十分に知られていません。 もちろん個人差も多々あるでしょうが、 大きな流れは、どの方も同じように思えます。 今回は、そのプロセスをお話しします。 その前に、多大なストレッサーを受けてストレス反応が出ると、 どんな変化が起きるかを説明します。 ストレス反応の出方も個人差がありますが、大きく分けて三つの反応が現れます。 第一に、社会機能の低下。 集中力や判断力など私達が仕事をしたり、作業をしたりするときに必要な機能のことを、社会機能と言いますが、これが落ちるために、作業効率が悪くなったり、ケアレスミスをしたりします。同じ事ばかり考えて、なかなか先に進まないときなども、この社会機能が低下していることが疑われます。 第二に、感情面での変化。 ストレッサーを受けると、落ち込むのではないかと感じる人が多いようですが、一般的に、苛々感が先に現れます。みなさんも仕事が立て込んできたりすると、苛々して身近な人に八つ当たりしてしまった経験がないですか? このように、最初は苛々や易怒性が現れる事が多いのです。 第三に、身体面での変化。 これは倦怠感、易疲労感です。いくら休んでも疲れがとれない、何かをするとすぐに疲れきってしまう、などの状態を経験されていることでしょう。 これらの変化が、私達の身には始終起きています。しかし、通常はレジリエンスと呼ばれる抵抗力があるので、意識しない内に回復し、またストレスを受け…と言うことを繰り返しています。 ところが、この抵抗力を越えるストレッサーに晒され続けると、やがて病的な状態に移行してしまいます。その一つがうつ病というわけです。 うつ病傾向になると、どんな変化が起きてくるでしょうか。 これも個人差はあり、当てはまらない人もいらっしゃいますが、一般的には、まず社会機能の低下が更に顕著となります。仕事であれば、作業のスピードが落ちて、ミスを連発する状態です。普段ならしないような凡ミスも多くなります。 そこから更に抑鬱状態が進むと、意欲減退が現れます。どうにもやる気が出なくなり、好きだったことにも手を出すのが億劫になってきます。 そして、最終的に、抑鬱気分、つまり憂鬱な気分が取れなくなり、さすがに自分でもおかしいと気付き、病院受診を考え始めます。 このように病状の悪化は、ストレス反応から始まり、社会機能の低下、意欲減退、抑鬱気分と進行して行くのです。 逆に、治療が始まり、回復していくときは、この逆の事が起きます。 まず、気持ちが少し軽くなります。重苦しかった気持ちが徐々に改善し、気が楽になってきます。 その後、意欲が回復。少しやる気になってきて、身の回りのことや簡単なことを手がけるようになります。外出を始めたり、食事がおいしく感じてきたりもします。 この意欲回復が日常生活に与える影響は大きく、もう治ったかのように感じる人も出てきます。仕事で病休を取っている人は、そろそろ会社に行かなくちゃ、と考え始めるのがこの時期です。 しかし、実はこの後にもう一つ乗り越えなくてはならない段階があるのですが、その前に仕事復帰をしてしまうと、職場に行ったものの仕事にならず、自信を失って再び休職ということになりかねません。 その最終段階が、社会機能の回復です。 その社会機能、つまり集中力や判断力、記憶力などですが、これらがしっかり回復してこそ、本来の回復、病気の寛解となるのですが、ここまでいくのに実は結構時間がかかります。 そのため、うつ病を始めとした精神疾患の治療には、じっくりと腰を据えて、長期間の治療を覚悟して望むことが必要になってきます。 病気になると本当に大変ですね。ですから、最初にお話ししたストレス反応が出ている段階で、何らかの対応を取ることが大切になってきます。しかし、そういう事に気を配る日本人は少ないようですが…。 みなさんは病気の治療という段階に進んでいますが、周りの方々を見てみるとどうでしょう? このストレス反応が出ていても、気にも留めずに無理をしている人はいませんか? そういう方にはみなさんから声かけをしてあげてください。 ちょっと立ち止まって休みませんか・・・と。
Sapporo Kobushi Clinic