2007年1月号
発行こぶし編集部
第220号『いじめの話』
藤田 毅

・平成19年
いよいよ平成も19年目。正直もうそんなに経ったのかという感じである。平成という年号の発表が昨日のことにように思い出される。
昨年もまた色々な問題が起きたが、我々に直結するものとしては、高齢者の医療費負担増や介護保険制度の変更やいじめの問題があげられるだろうか。
医療費などの問題については亀川ケースワーカーにまかせるとして、私としてはいじめの問題が気になったテーマであった。
当院にも数多くのいじめ経験(たいていは被害者)が元で苦しんでいる方が来院されているし、診察で話題にしていないだけでいじめの対象となった方も多数おられるだろう。

・いじめを調べると
Google(インターネット上の検索システム)でいじめを検索すると124万件。
しかも相談できる機関が北海道だけでも315件あるとのこと。多くの関心があることが分かる。
専門家の方々が系統だった解説や対策を沢山述べられているので、正しく理解されたい方はそちらをご参照いただくとして、ここでは私独自の勝手な話をしようと思う。
いじめの起源は古いらしい。まあ、いじめをどう定義するかにもよるが・・・。
しかも世界中に見られるのだから、人間の特性かとも思える。そうだとすれば、これを矯正するのは容易ではない。
しかもいじめている本人にその意識がないいじめもあるのだから厄介だ。

・外来から見たいじめ
学生時代にいじめの対象となった人が、その後も苦痛を抱えながらクリニックに来られる。
訴えは色々だが、たいていは対人関係に問題を抱え、情緒の制御がうまくいかなくなっている。
当然のことながら、対人緊張はあるし、他人を信じることができにくくなっている。うつ病になったり、不安障害を抱えている人もいる。表面的な病状が緩和されたとしても、その背景に深い絶望感や恐怖が根付いているのだから、またすぐに何らかの精神症状を招いてしまう。
本当に悲痛な思いが伝わってくる事が多い。
また、被害的な意識が強くなってしまったり、攻撃性が必要以上に増してしまっている場合もある。
それらが表面化していると、社会適応がうまくいかなくなることが多くなり、就労や家族関係などに重大な障害が起きる。
これらの認知を修正するのは容易ではない。
本人が気付いてくれているならまだしも、そうでない場合は、自分は何も間違ったことは言っていないと反論する。
確かに間違っているとはいえない場合もあるが、もう少し考え方を変えていければ楽だろうにと思うことが少なくない。
しかし、それはあくまでも外から見ているから感じることであって、ご本人たちは必死になって生きづらい人生を生きているのだから、精一杯なのだろう。
切ない話である。

・悪いのは誰か
犯人探しはあまり意味がない。
いじめられている人に責任がないことは明白で、それに関しては私も譲る気はないのだが、では悪いのは誰かというとそれは難しい。
いじめた本人にまずは責任がある。
ではその人はなぜ他人をいじめるのか?学校が悪い?社会が悪い?家庭や生い立ちが悪い?これは極めて難しい。
どれも少しずつ問題を含んでいることもあるし、決定的な問題点を見出すこともある。
だから犯人探しはあまり意味がないように思うのだ。
大切なのは、どう対応するかだ。いじめが良くないことをどう教えるか。それに尽きる。
が、しかし、いじめをした子供の家族の中は「何が悪いんだ!」と公言する人もいるし、学校も見て見ぬふりだったり、思い込んで間違った判断に固執していることもある。

・今できること
今、私たちに何ができるだろうか。
人は人をついいじめてしまうものだとしたら、どうそれを防げばいいだろうか。答えは色々あるだろうし、一本化はできにくい問題だと思う。
ただ恐らく、共通して言えることは、周囲の人間とのコミュニケーションをどれだけ取れるかが鍵になるであろうということ。話し合いがなされ、声かけがなされ、何でも言える雰囲気ができれば、かなりの割合でいじめから救えたり、未然に防げたりするであろう。
問題はそれをどう実行させるかだ。
学校や地域のコミュニティの中で、そういった風潮が広まり、誰が先導するということもなく、自然と実施されれば、こんなに素晴らしいことはない。
今現在でも、子供たちに接する機会の多い人たちは、そういった取り組みを続けているのかもしれない。
その結果、不幸にして成人してからも心の傷から解放されず、精神科のクリニックを訪れなければならない人が一人でも減ってくれることを願わずにはいられない。

・今年は・・
いじめの問題が昨年だけのブームで終わることなく、今年も来年も議論され、改善の道が模索されていく事が望ましい。
見て見ぬ振りをしてしまう大人が増えないでいてくれる事を切望する。
それと今年のもう一つの話題。
昨年はご存知の方も多いと思うが、北海道日本ハムファイターズの日本一、アジア一が印象的だった。
当院がスポンサーを務めているサッカーのコンサドーレ札幌もリーグは思うような成績が残せずに終わったが、天皇杯はベスト4に残り3位ということになった。
スポーツ観戦や自分で運動する事は、いずれもストレス発散には適している。
苦手な方もいらっしゃるだろうが、今年もまた大いに私たちの発散に貢献してもらいたいと思う。
一緒に応援しましょう。(^_^)