2001年05月号
発行こぶし編集部
第154号
『「うつ病」にならないのは、
今や赤ちゃんだけかもしれません。』
三田村幌

・『うつ病』三田村幌
医者がこんな事ばかり書いていちゃいけないのかもしれないけれど、どうも最近も調子が悪い。いや、昨春ほどではないけれど、うつ病ですね。一昨年春に軽く始まり、昨春、今春と。一度始まると繰り返す心配がある。これを「履歴現象」というのだけれど、私には(個人によって違うけど)春がこれからも危険である。こうした点を見るとやはりこの病気は「生物学的な身体病」と考えてよい。しかし常に発症には「心理的」要因がある。新院長を迎えて役割喪失、父母を看取って荷おろし、愛犬ゴルを失って喪失感。こんなことをウツウツと思い起こしている時に、先日新聞でこのタイトルを見出しにした全面広告をみつけた。 以前にも数段の広告として見ていたもので某製薬会社の抗うつ剤の治験募集であるが、今回はなかなか引きつけるものがある。札幌市内の「病院」通院が原則だから皆さんには直接関係ないかもしれないし、またここでこうした治験募集の是非長短を云々することもないが、読まれた方々は「自分はどれか?」などと考えたのではないだろうか。 さて広告は「『うつ病』でお悩みの方」として裸の赤ちゃんの背中の写真を背景にたくさんの病名(?)を解説して書いている。活字の大きな順にその解説と共にここに紹介しよう。

・①リストラうつ病
働き盛りにとって、「リストラ」は最大のストレス。不況からくる、サラリーマン特有のうつ症状です。

②定年前うつ病 定年後の人生に対する恐怖と不安から、うつ状態に、定年を前にしたサラリーマンに多い症状です。

③微笑みうつ病 ゆううつな気分を隠すためのつくり笑いが、ストレスとなり、うつ病の発症原因となります。

④休日恐怖症候群 休むことが怖い、仕事も無いのに、休日出勤してしまう。これは心も体も休めない状態になるうつ症状です。

⑤結婚後悔症 結婚生活の理想が高すぎて、現実とのギャップに落胆、不満をパートナーにぶつけるなど、次第にうつ状態に陥ります。

⑥仮面うつ病 不眠や倦怠感などの身体症状という"仮面"に目を奪われて、精神症状が見逃されてしまう、うつ症状です。

⑦荷おろしうつ病 子供の結婚、マイホームの購入、役職への昇進・・・。長年の負担から解放された「荷おろし」状態のときに起こるうつ症状です。

⑧男性更年期うつ病 心身の衰えが現れてくる40台はストレスに反応しやすく、うつ状態に陥りがちです。

⑨スーパーウーマン症候群 仕事も家事も完璧にこなそうとして、疲れ果ててしまう症例です。バリバリ仕事をしている人に、多くみられるうつ症状です。

⑩引越しうつ病 引越しを終えた後に襲う、精神的・肉体的疲労。この心身の極度の疲労から虚脱感に陥ったときに起こるうつ症状です。

⑪燃えつき症候群 仕事に全力を使い果たして、心身ともに疲れきり、突然、無気力になってしまううつ症状です。

⑫帰宅拒否症 やすらぎの場である家庭に、自分の居場所が無い、心の余裕を失った人にみられるうつ症状です。

⑬専業主婦症候群 一日のほとんどを家で過ごし、家事に忙殺される毎日、社会から取り残されるという焦燥感・不安感からうつ症状に。

⑭錆びつき症候群 実力を発揮できる仕事がなく、やる気が失われる、能力を錆びつかせる職場環境が原因となるうつ症状です。

・さていろいろな思いでこれを読まれた方も多いだろうが、
ここでいくつかの注意が必要だ。まず活字の大きさのこの順番には何の意味もない。もちろん重症度でもない。なるほどここに書かれているほとんどが我々専門家もよく用いる言葉ではあるが、決して厳密な病名や医学概念でもなければ、生物学的症候群ではない。また必ずしもこれら全てがうつ病圏の概念ではない。この点では広告の「募集対象」に「以下のうつ病の症状をお持ちの方
○気分が沈む。やる気が出ない。何事にも思い悩みがち。
○何事にも興味が持てず生活を楽しむことができない。
○食欲がなくなり、疲れやすい。
○寝付きが悪く、夜中や朝早く目覚めたりする。」と抑うつ状態の範囲を明確にしているのが救いであるが、しかしそれにしても各解説は専門業界からの広告としては、ちょっと不十分であり、誤解を招きそうな内容が多い。
ひとつひとつ注釈を加えるのは今の私の精神状態では無理であるが、全体で注意したい問題に一点だけ触れよう。現代にうつ病は決して稀な病気ではないし、この広告でそれが喚起されることは非常に良い。
しかしこれを読むと、うつ病は心理的状況的ストレスから生じるようである。にもかかわらずその治療はそのストレス原因の解決でなく、薬物という生物学的身体的方法で行う。「あれッ?」と思われる方もいるだろう。
かつて抑うつ状態は「内因性鬱病」と「抑鬱神経症」に分けられた。
前者は生理的身体疾患であり、後者は心理性格的状況的反応であるという考え方だった。しかし現実はそう簡単に二分できない。前者が心理的契機で発症するし、後者が明らかに生理的身体的変調を来たしその側面からの治療なしには改善しなかったりする。かくして最近の診断基準はこうした単純な二分法をやめて細分類するようになったが、同時にいろいろな概念の混乱も生じている。
大切なことは「心身一如」。心か?体か?ということではなく、必ず両面から考えなくては。もちろんどちらにどれだけウェートがあるかは一事例ごとに異なるが、発症への経過に心理的ストレスもあれば身体的変調もあり、治療の道にも身体的アプローチと共にやはり精神的洞察と対応が必要。所詮人間も心と身体は切り離して考えることは出来ない。
そしてさらに大切なことは、予防の心であり、ふだんから心身の健康に気をつけて元気に息長くこの日々を過ごしたいものである。医者だから、患者だからというのでなくお互いに、共に生きるものとして。
蛇足ながら、この最後の文面を書きながら皆さんにお願いしたいことも一言。今札幌の診療所は混んで大変である。このままで行くと藤田院長は夜遅くまでの診療で身体を壊すか、バーンナウト(前述の燃えつき症候群)してしまう。
そこでいよいよ6月からは若手の先生を迎えて(もちろん院長もまだ若いですが)完全に2人診療体制になる。これで日々の日中の診療を充実して、遅くとも夜9時過ぎには院長はじめスタッフも患者さんも帰路につけるようにしたい。
薬局からの悲鳴も聞こえてくるようだし。お互いが息長く診療所を活用できるように、心からお願いします。

・●お知らせ●
『6月から精神科医王谷淑子先生が当院に勤務いたします。』 6月より、精神科医の王谷先生に来て頂く事になりました。背が高く、すらっとしていて若い先生ですが、臨床医として経験も十分。こぶし初の女医さんとして、きっと、皆さんのお力になって頂けると思います。 尚、先生の診察時間は札幌こぶしクリニックの月曜診療開始計画(まだ、計画段階ですので詳細は未定ですが…。)に伴い、月曜から金曜の朝から夕方までを予定しております。 よろしくお願い致します。

・~読者の広場~〈食のシリーズ22〉
『春、ウオーキングの季節です』ネコ吉
どうしても運動不足になりがちな冬を越えて、やっと外も歩ける気温の春がやってきました。
運動は私たちが健康に生きていくためには必要なものなのですが、どうしてもそれを忘れがちになります。現代の日常生活では重労働があまり存在しはいため、ちょっと多めの有酸素運動を継続してすることが大事です。
様々な有酸素運動がありますが、オススメはなんといっても「ウオーキング」です。
あまり、難しく考えずに外に出てみましょう。ただ、靴は運動靴をはきましょう。
帽子はかぶったほうが良さそうです。人によっては音楽を聴きながら歩いた方がテンポよく歩けるかもしれません。
私は日常、歩くことが少なく休日しか時間が取れないため娯楽の要素も含ませて、ちょっと遠くに目標地点を定めます。例えば、コーヒーの美味しい喫茶店だったり、評判の良いパン屋だったり、花咲く公園だったりします。
北海道は一気に花咲く時期があるので、その時に歩かない手はありません。自動車で観光地に行って花畑を見るよりも多くの花達に歩く先々出会います。交通渋滞をしている横をすいすいと歩行で追い抜くのはけっこう気持ちがいいものです。
そしてできるならば、頭をしっかり上げて、背筋を伸ばし、手をしっかり振って歩けばけっこうな運動になるのです。目標としては万歩計で1万歩。時間では20分以上。歩きなれればけっこう短い距離なんです。
20分で消費されるカロリーは約80キロカロリー。ちょっとがっかりしましたか?でも、地道な積み重ねが重要です。
GW、ちょっと喫茶店巡りを徒歩でしました。円山公園から大通りまで。
豪華バージョンなのであっちこっち寄り道をして、けっこう楽しんできました。
雑誌を一冊もってガイド・ブックとし、多くの店を発見しました。全て中まで入った訳ではなく、素通りしたものもありますが、それは次回のお楽しみです。
今度は友達も案内できるので一石二鳥なのですが、なるべくカロリー控えめに飲み物・食べ物をしたつもりなのですが、あまり収支は合ってないかもしれません。でも、たまになのでいいかな、と思ってます。
もし、貴方が病気を抱えているのならば、医師と相談の上で運動内容・量を決めて下さいね。