「元気な明日をめざしましょう・・・・一年をふりかえりながら」
三田村 幌
久しぶりにここに書くような気がする。もうすぐ2000年も終わるが、何故か今年は時間が長かったような気がする。多分今年が私にとって結構シンドかったせいだろう。病気や悩みを抱えている方も、同じようにその時間は長く感じたのでしょうね。春夏秋冬、毎年繰り返して、特にミレニアムの最後に意義があるわけではないけれど、節目節目に自分や時代を振り返ることには意味もあるだろう。
★私がシンドかったというのは体調のせい。 うつ病、交通事故後遺症の再燃、もちろん年齢もあるが、やはり昨年から今春までの様々なストレスの蓄積の結果だろう。以前にも書いたようにホームズという人の研究では蓄積したストレス度が高いほど翌年大病にかかる可能性が大きくなる。みなさんもこの一年を振り返り、思い当たる人は来年の健康に大いに気をつけていただきたい。
★最近話題にしていなかったが、我が家のゴル(雄犬)、ポン(雄猫)、ナナ(雌犬)は、私達夫婦とともに何とか生きている。しかし母を看取った後も我が家は依然として老人家族。最近ゴルも体力が弱り、散歩も自分から早めに切りあげてしまう。弱っている我々夫婦にもそれはちょうど良いのだけれど。散歩中に排尿する時も、思うように脚を挙げることが出来ない。階段を降りることが出来ないのも以前に紹介した強迫神経症のせいに加えて脚力の低下。困るのは家の中で失禁して歩くこと。そして暗い狭いところに鼻を突っ込んでじっとする、これは犬の痴呆症に見られるというのだが。元来わがままに育ったゴルだが、最近特に抑制が効かず、怒りっぽい。それでいてチョットした刺激にビクビクしてしまう。食欲は衰えず、以前にも増して我慢が出来ず、また水分摂取量、排尿量が非常に多い。多分糖尿病!こうして考えると前景に出ている症状の多くは脳血管性痴呆症のそれ。しかし限られた人生いや犬生を考えると、なんでも制限し厳しくすることが良いとは言えまい。最近の大雪の中では若い野生の血が蘇るのか、非常に生き生きと張り切って散歩に出る。体力こそ続かないが、大事なことはこうした日々の喜びの感情を大切にすることだろう、たとえ痴呆であろうとも。
★ポンは、こんなゴルを相手にいつもからかって遊んでいる。ゴルも依然としてポンにだけは噛み付いたり反撃もせずに、逃げ回って一緒に遊ぶ。母のときの経験から、こうしたポンの姿が見られなくなったならば、ゴルもいよいよ情緒的コミュニケーションも取れなくなった時と覚悟しなくてはならない。人間同士、生きているものの間に、この情緒的コミュニケーションこそが大切。現代人の間には表面的言語的コミュニケーションはあっても、これが足りないことが気になる。
★情緒的コミュニケーションと言えば、ナナは拾われてもう2年半になろうというのに、依然として私との間にそれを感じ取れない。かつて診断したPTSDというのは間違いないだろう。そのトラウマは「虐待」。しかし、ナナも最近私の手から食べ物を採るようになった。また私から離れながらもその距離を少しずつ縮めてきているようだ。心の傷が癒されるのには時間がかかり、粘り強い付き合いが必要ということか。
★「虐待」といえば、この11月20日から「児童虐待防止法」が施行された。児童虐待というと圧倒的に実母によるものが多いが、最近マスコミでも良く事件として取り上げられているのでご存知だろう。今度の法律にも明確に定義されたように、児童虐待には「身体的虐待」「精神的虐待」「ネグレクト(養育拒否等)」「性的虐待」があるが、その子の生命や発達に危険があると判断されたならば、強制的にでもその親から切り離してその子を安全な環境に保護すべきで、今後それが出来る。もちろんそれで解決ではない。私たちを訪れる母子の中にも、虐待してしまうことに悩む母がおり、自分の心の病の故に子供に当たってしまう親がおり、虐待を恐れて育児ノイローゼになっているお母さんがおり、感情的になる事を恐れて子供と空々し付き合いしか出来ない父親(これは結果的にネグレクトに等しい)等さまざまな人がいる。もちろん幼児期に自らが受けた虐待を悩むPTSDの若者も。法整備は問題の解決ではなく、やっと問題解決への必要条件がひとつ得られたに過ぎない。これを機に多くの人がこの問題に関心を持ち、粘り強く解決に取り組んでいかなくてはなるまい。
★受診する多くの若者の中には、「自分がこうなったのは、親からこうこうという仕打ちを受けたからだ」と妙に納得してしまっている人がいる。みんなが皆PTSDではない。こうして外部に原因を求めて自分の症状に納得することは、取り敢えずの心の安定にはなるかもしれないが、問題解決にならないばかりか、自分自身の努力を回避してしまい、自分の発展の可能性に目をつぶってしまう場合もあるので、要注意。今年も若者の受診は多かった。現代の若者には様々な悩みがある。そこを問わずに、不登校、イジメ等の見かけ上の問題にばかり目を向けてしまうのも危険だが。
★若者にまつわる事件では「行為障害」という「診断」が新聞紙上にたくさん目に付く。しかしここで診断名が一人歩きしていることも気がかりだ。実は「行為障害」だからこうした事件を引き起こしたのではなく、こうした事件を引き起こした若者を「行為障害」と呼んでいるに過ぎない。さらにこれらが記載されている最近の専門的診断基準ICD10とかDSMⅣとかいうものでも、そこに描いているのは従来の「疾病」ではなく「障害(disorder)」である。「病気」は「障害」のひとつになり得ても、「障害」だから「病気」ということではない。現代は「病名」がマスコミに安易に取り上げられ、それに振り回されている人も多い。最近も自分が「注意欠陥障害」ではないかと悩んで受診した立派な成人女性が数人おられた。これもTVの何かの番組で誤って報道されたことによる。いずれにせよ大切なことは「病名」ではなく、苦痛や問題がどうしたら解決されるか、ということ。「診断名」を得て安心する現代人にはならないように。
★「障害」といえばパラリンピックがシドニーで開催され、選手にも、見る人、応援する人にも多くの感動を与えた。身体的であれ精神的であれ障害をもつ者が、「健常者」と共に普通に生活できること、それが当たり前の世の中。しかし当たり前じゃないこの世の中で、障害についてひとりひとりがもう一度考えたい。実は先のdisorderも、パラリンピック選手の抱えているimpairmentも、disabilityも、精神障害を含む多くの障害者が抱える社会的なhandicapも全部日本語で「障害」なのだ。「障害」という言葉で一部のみを取り上げて、問題が解決したかに考えてしまうことは極めて危険。
★事故であれ病気であれ老いであれ、身体の障害も辛い、私の場合も。しかし「こぶしクリニック」は順調に世代交代を終えて、若返り、21世紀に新たなはばたきを見せる。私もそれを見守り支援したい。私自身にはまだ少し早いが今年実施の「介護保険」も今後老人をただ介護される対策対象物にしてしまうものであってはならない。老いても、それなりの積極的な社会参加がある。生きているのだから。
★毎年秋になると江戸時代の医者・安藤昌益の本を出して読む。最近、悩む多くの若者や大人たちを診ていて「個人主義」はこれで良いのだろうか疑問に思うことがある。しかしその否定は時に全体主義的な思想への逆行という危険にもつながる。人間の均質性に依拠する平等論はその危険を孕んでいる。人間の多様性を認める平等論が、障害者のノーマライゼーション思想にも繋がる。安藤昌益は言う、「万万人ノ不同ト一人ノ全同トニシテ、一真ノ全体ナリ。若シ不同ヲ嫌ヒ全同ヲ好ミ、全同ヲ知ラズ不同ヲ好ム則ハ、真ニ非ズ。皆失リナリ」。孤立せる個人主義も、個人否定の全体主義もともに誤りである。障害を含めて一人一人の個性が尊重される平等社会、それが21世紀への夢である。良い初夢を見よう。
・~~~読者の広場~~~
<食のシリーズ18>『食品交換表のススメ』ネコ吉
冬、そして忘年会の時期がやってまいりました。私はこの時期てきめん太ります。今年はとにかく甘い物が食べたい病で、しっかり食べた後に頭を抱えてしまいます。休日は一日中なんだか甘い物を食べているような・・・。イカン、イカン。ちょっと、しっかり勉強して、少しでも体重の増加をくい止めましょう。
私は栄養指導の時に必ず勧める本があります。それは「食品交換表」です。まるで本屋の回し者のごとく、です。この本は糖尿病の食事療法のために作られた本でありますが、健康にダイエットをするためにも、またはバランスの良い食事を作るためにも役に立つ本です。
「バランスの良い食事を心がけましょう」。と言われたって、どうすればバランスの良い食事って出来るの?って疑問に思った事はありませんか?野菜を食べていればバランスが良い食事になるんじゃないのかって?でも、どの位食べれば良いか知ってますか?答えは食品交換表に載ってますが、300gを目安に一日食べた方が良いとされてます。果物の一日食べる量を心がけてますか?みかん、かき、りんごが多く出回ってますが、食べ過ぎはやはり禁物です。果物によって一日に食べられる量は異なります。
ダイエットするときにカロリーばかり気にかけてませんか?カロリーを取らなければ良いと言うもんじゃありません。魚や肉だって、油だって取らなくちゃ健康ではいられないのです。美しくならない、危険なダイエットなんてしない方がいいかもしれません。健康であることが美しいのです。さてクイズです。ベーコンはお肉の仲間でしょうか?実は油の仲間なんです。バラ肉、アボガド、クリームチーズ、あんきも、ごまは油の分類に食品交換表ではされてます。
もう一つ、じゃがいもは穀物でしょうか?野菜の仲間でしょうか?これは宿題にしてしまいます。もし興味があったら食品交換表を本屋でご覧になってくださいね。
文章だけで食品交換表の内容を紹介し切れませんので、もしよろしければ是非この本を手にとって下さい。貴方が病気でなくとも健康であるための食事の仕方が載ってますので一家に一冊あってほしい本なのです。
では、次回は使い方についてちょっと詳しく書いていきたいと思います。それまでに一回でも食品交換表を手にしていただければ・・・大きな本屋さんには置いてあると思いますよ。
やっぱり、本屋の回し者みたいな文章になってしまいました・・・(笑)
Sapporo Kobushi Clinic