2000年09月号
発行こぶし編集部
第146号
『介護保険で~す !!』
三田村 幌

●介護保険料
さて介護保険制度が実施されてまもなく半年を迎えます。
すでに40歳以上64歳までの方は介護保険料が、4月から医療保険の保険料と一括して徴収されていたことをお気付きだったでしょうか?そして65歳以上の方もいよいよこの10月から介護保険料が徴収されます。
そしてそれも一年後には倍額になります。
こうなると介護保険を有効に使わなくてはなりませんね。
もちろんこの制度は高齢化対策を何でも医療の枠で考えていた従来の方式よりは一歩前進ではあるのですから。
しかし問題がないわけでもありません。
そこで私たちの診療所で何ができるのか、何をするのかも考えながら、介護保険制度を概観してみましょう。

●まず要介護認定の申請を
年をとると心身が不自由になることは否めません。
そこで自立した生活を続けるためには「介護」が必要。
病気の場合でも全てを「治療」で解決はできません。
高齢者の場合には「どう生きていくか」を支えていくかが課題です。
核家族化の現代にやっとそれが薬でも入院でもない介護の制度によって実現することになります。
時には医療と介護の二本立てが良いでしょう。
さて65歳以上の方が介護サービスを必要と思ったら、「要介護認定の申請」をしましょう。
本人か家族が市町村の窓口に申し込みますが、ケアマネージャー(介護支援専門員)に頼むこともできます。
65歳未満でも、40歳以上で政府の決めた15の「特定疾病」(初老期性の痴呆やパーキンソン病など加齢も要因をなし治療だけでなく介護が必要なもの)の方は要介護認定を受けられますので相談してください。

●認定されたら介護サービス計画(ケアプラン)をたてましょう
各市町村は介護認定審査会で一人ひとりについてどの程度の介護が必要か判定して、「自立・要支援・要介護1~5」に分類します。
「要支援」では月に約6万円、「要介護5」では約36万円までの範囲でサービスを受けることができますが、サービス内容は原則として利用者または家族の希望によって決められます。
サービスの種類には、ホームヘルパー派遣、訪問看護、訪問入浴、デイケア、ショートステイ、車椅子などの貸与、住宅改修、痴呆のためのグループホームなどの在宅サービスと、老人ホーム、老健施設、介護療養型医療施設などの施設入所サービスがあります。
利用者の障害や不自由(及び経済負担)の状況に応じて最もふさわしい介護サービスの計画を立てると良いのですが、その相談に乗って具体的なプランを立てて、さらにそれをチェックしてくれるのがケアマネージャーです。

●納得のいくサービスを受けましょう=費用の1割は利用者負担
介護保険サービスを十分に利用するためには自分に合ったケアプランを立てることが大切。
そのためには日頃の自分の心身の調子をよく理解している「よいケアマネージャー」を選ぶことが重要です。
現在までも老人介護サービスを受けている方は、その担当者に相談してみると良いです。
たいていの介護サービス施設にはケアマネージャーがおりますから、身近な人が良いですね。
ただしそうしたケアマネージャーも自分の施設のサービスを中心にプランを立ててしまうかもしれません。
そんなときには遠慮なく自分の希望を言いましょう。
自分にあったサービスが今回の介護保険の特徴なのですから。
実際に受けているサービスや要介護度に問題がある場合にもケアマネージャーに相談できます。
ただし受けたサービスの費用の1割は自己負担となります。
この点も今までの老人医療保険とは異なりますので間違いのないように計画を立ててもらいましょう。

○「かかりつけ医師(主治医)意見書」(当院の介護保健サービス=その1)
市町村に要介護認定を申請した場合に、そこから調査員が来て全国一律の「基本調査」を行って、それをコンピュータにかけて要介護度が一次判定されます。
しかし新聞等でも承知のとおりこれには様々な問題があり、実際私たちの実感でも痴呆症や不随意運動障害(パーキンソン病など)などでは全くその介護の大変さや生活の不自由さがそこに反映されません。
そこで主治医意見書を参考に最終判定がなされます。
そしてこの意見書を書くのが私たちの仕事です。
またふだん医療にかかっていない方についても要請があれば診察して意見書を作成します。
そこでは詳しく病状、生活の障害、悩みなどをお話しください。

○「居宅療養管理指導」(当院の介護保健サービス=その2)
ケアプランができて日頃そのサービスを受けていても、心身の調子も日々変わります。
サービスの適否はたびたびチェックされていなくてはなりません。
ケアマネージャーに対して、日頃から皆さんの在宅療養生活を見ている主治医からのアドバイスが重要です。
主治医が実際に自宅に訪問してその生活を見て、皆さん自身への直接のアドバイスの他、必要に応じてケアマネージャーや各サービス担当事業者をバックアップしていくのが「居宅療養管理指導」というものです。
従ってこれは主治医が直接お宅を訪問した場合に適用されますが、一回の居宅療養管理指導の自己負担は940円で、医療保険とは別にその都度徴収されますのでご了解ください。
しかし往診のたびに請求されることはありません。

○「『こぶし介護相談室』=ケアプランの作成と調整」
(当院の介護保健サービス=その3)
こうして見ると、介護保険ではケアプランやケアマネージャーが重要になってきますね。
しかし先にも触れましたように時には施設のケアマネージャーやケアプランの場合に困難が生じる場合があります。
また老人サービス施設やケアマネージャーを今まで知らないという方もおります。
そこで私たちは当院に通院する患者さんが介護保険も適切に活用できるように、法人の中に「こぶし介護相談室」という居宅介護支援事業所を設けて認可を受けました。
医師三田村と看護婦渡辺(岩見沢)の二人がケアマネージャーの資格を持っておりますので、これでイザとなったら皆さんの相談に応えられるでしょう。
原則として従来からお世話になっている施設や市町村の居宅介護支援センターのケアマネージャーやケアプランの活用をお勧めしますが、もし困難な問題にぶつかった場合にはどうぞ相談してください。

○「訪問看護」(当院の介護保健サービス=その4)
診療所は上記の居宅療養管理指導とともに訪問看護についても介護保険下の事業所として自動的に認められております。
従って介護保険に基づく訪問看護も私たちは行いますが、ただしこの点については、多くは「精神科訪問看護」として医療保険で扱われる場合が多いと思われます。
(介護保険の訪問看護の場合には前述の要介護度によって利用限度の枠内に制限されます。
)ただし他の訪問看護ステーションからの訪問看護の場合には介護保険による場合もあると思いますのでご注意ください。

●介護保険のサービスが正しく有効に運用されているかチェックするのが私たちの仕事
以上、介護保険制度の概略と当院の介護保険サービスについて述べましたが、要は私たち医療機関の役割としては、今後様々な介護サービスが様々な施設や業者によって提供され、それが利用者の皆さんに適切に利用されて、皆さんの生活が心身ともに快適にできているかをチェックし、どうしたらよいかをアドバイスしていくことであると考えております。


今後も介護保険制度は少しずつ改良されていくでしょう。
問題はこの制度が単に国の医療費を抑制するためや、様々な業者にビジネスチャンスを提供するためだけの道具ではなく、今後の高齢化社会の中で本当に私たちが健康に元気に長生きができて、人生を充実してまっとうできるためのシステムにしていくことでしょう。
私たちはこの介護保険制度を医療保険制度と共に正しく活用し、注文をつけるところはちゃんと発言していかなくてはなりません。


「老人は若者より病気は少ないが、彼らの病気は彼らから去らず。
」ヒポクラテス 「老人ほど人生を愛するものはなし。
」ソフォクレス

・~~~読者の広場~~~
<食のシリーズ15>
『それでも牛乳飲みますか?』ネコ吉
雪印でこの夏は大騒ぎでしたね。
雪印に相次いで食品加工品に異物混入騒ぎ。
皆さん、食品に対してパニックになってはいませんか? でも、よく考えてみましょう。
私たちの口にする物はどこからやって来るでしょうか?トマトで考えてみましょう。
トマトは土の上でなります。
太陽の光を浴びます。
トマトの花には虫だってやってきますし、自然に雨だって降ってきます。
赤くなって人の手でもがれます。
それを箱に入れて運んで、トマトケチャップ・トマトジュースになる場合は工場に運ばれて、へたや皮などの不要な部分を取って、加熱加工されます。
人の手にかならず触れます。
細心の注意を払って、人の髪や爪、虫、加工をするための道具の破片(プラスチック等)は入らないようにするのですが、私たちが料理を作った時のように、どんなに注意しても髪が入っちゃったりするみたいに、異物が混入したりするわけです。
入らないようにするためには特別な技術が必要なんですが、特別な技術を使っても人の手で作られる物。
異物混入となってしまうんです。
牛乳は栄養豊富な食品です。
栄養豊富=細菌が繁殖しやすい、と思っても良いんですね。
ですから牛乳の殺菌温度・時間を今度見てみて下さい。
パッケージに必ず書いてあります。
大抵120~130℃で2~3秒。
超高温殺菌で殺菌されます。
冷蔵で一週間ほどの保持期限。
開封後はなるべく早く飲まねばなりません。
牛乳って一応、生ものだって思って下さいね。
牛乳は牛から搾られて、運ばれて、工場で加工されて・・・ニュースなんかでかなり詳しく報道されました。
今回の事件は脱脂粉乳が原因らしいのですが、脱脂粉乳を使用した食品って非常に多いんです。
ですから食中毒に罹った人の数がすごく多い事件になってしまいました。
工場で牛乳を低温保持しなければいけないのに、停電で温かくなってしまったまま何時間か経ってしまった・・・細菌が繁殖してしまったようです。
有毒な物質が作られて、それを脱脂粉乳にしてしまった・・・。

それでも牛乳・乳製品を食べなきゃどうしてダメなの?なんて思う人がいるかもしれません。
国民栄養調査って言う調査があります。
その結果では、日本人に足りない栄養素はカルシウムなんだそうです。
カルシウムが足りないと骨折しやすいのは皆さんご存じかと思います。
特にダイエットをしている女性は要注意!年をとってから骨折の危険性が高いのです。
色々な情報が得られる時代です。
安心な食品の情報を取り寄せて生活する事ができると思いますよ。
でも、敏感になりすぎるのもどうかと思うのです。