こぶし

こぶしだより 2011年02月号

2011年 02月
『ありがとうございました』
亀川淑子
こぶしだより 第269号

今年も早くも、,ひと月が経ちました。
日々の雪かきで、体が辛くなって過ごしている方も多い事と思います。
 さて、この度は、先月号にも、藤田先生より報告がありましたように、3月をもって、私は、こぶしを卒業させていただくこととなりました。
皆さんに、きちんと御挨拶する機会もないまま、過ぎてしまいそうなので、この場を借りて、御挨拶をさせていただきます。

 振り返る余裕などなく、ただ、ひたすらに、日々をこなしていたように思え、今回、改めて振り返ると、なんと、一〇年近くお世話になっていました。
私が、道外から来て、まだ間もなく、北海道の気候や、習慣にも一喜一憂していた私のことを、皆さんが温かく迎え入れていただき、このこぶしで、皆さんに関わらせていただくことで、一緒にいろんなことを学び、クリニックでの我々のできる医療を、考えさせられたりもしてきました。
これまでに、大学病院や、民間の大きな病院、小さな病院などで、診療をさせていただいていた私は、クリニックという、入院設備のない、また、日常の生活にダイレクトに向き合わなければならない状況での医療について、初体験でしたし、とまどうことも多かったと思います。
つまり、皆さんが病院医療に求めている医療があるとしたら、それとは違うものが、クリニックではあるものだ、と勉強させられました。
   昔、まだ、私の医療経験が浅い時期に、大学病院での勤務をしていた私に向かって、病院勤務をしていた先輩が、「自分は町医者だから」と口癖のように言っていたことを、今の私には、その意味が良くわかるような気がしてきました。
「町医者」は確かに設備の整った、最先端の、高度な医療は難しいかもしれませんが、「町医者」でなければ、手のいきとどかない、耳をかせない、日々の生活に密着した問題にも、もしかしたら、取り組むことができるのです。
この取り組みには、皆さんの信頼が必要であり、それに見合うだけの技量と経験が必要なのではないでしょうか。
そこが、この「町医者」になれるかどうか、というところのような気が私はしています。
私は、最近、自分自身で、アカデミックなことをしてない状況の自分に対して、町医者だなあと思ってましたが、この真の「町医者」になれてきているのか、、、これは、皆さんの御判断におまかせするとして、私自身は、これから、まだまだ、町医者修行にもうひと踏ん張りしてみることとなりそうです。
 こぶしでの思い出を、と振り返ろうとすると、あまりの多さに、一つという抜き出しができません。
ゆっくり、一つ一つ引き出してみると、それなりに、鮮明に思い出せることが多いのですが、どれが一番?というと、、、、難しいですね。
もしかしたら、皆さんを大変長くお待たせしてしまっていたこと(待ち時間)の状態ですかね。
これは、こぶし現象と名付けてしまっては、怒られそうですが、本当に、申し訳なく、精一杯やらしてもらってたのですが、力不足で、御迷惑をおかけしてました。
皆さんの温かい御好意に甘えて、なんとかやってきていたのだと思います。
時には、本気で、怒ってこられる方もいましたが、もっともなことだと思います。
ホントにそういった、診療そのもの以外の事柄においても、皆さんに助けられ、教えていただき、今の私がいるのでしょう。

そうそう、雪国ならではの生活の常識などもたくさん教えていただきましたよね。
今では、少しの湿気でも暑いとぼやき、多少の雪では、動じず、まだまだ、雪かきは下手くそですが、雪道での転倒はなくなりましたよ。
すっかり道内人です。
また、時には、道内での楽しみ方なども、診療の合間に少しずつ教えていただいていたのも、私のささやかな楽しみでもありました。
 また、クリニックという立場での地域の皆さんとの連携。
これもこぶしに来てからの私の貴重な経験でした。
いろんな、関係者と一緒に、それぞれの立場からできること、できないこと、それから、問題とするか、しないか、等など。
見方によっては、困ることが、立場が違うことによって、困らなくなることなど、本当に勉強でした。
随分と、生活そのものに踏み込んだ問題に、向き合うことを経験させていただきましたが、時々、自分の立ち位置が分からなくなるくらい、私自身も見失いそうな状況にもなりました。
医療で出来ること、やってあげた方が良い時、やってあげない方が良い時、この見極めも難しく、私をいつも苦しめてました。
 それから、この長い期間を私と共に頑張っていただいた、藤田先生をはじめとし、スタッフの皆さんとの出会いも貴重なものでした。
この一〇年をあっという間に感じさせていただいたのは、このスタッフに囲まれ、やれてきたからかもしれません。
本当に感謝です。

今回の私の決断にも快く受けていただいたことを、しっかりと受け止めていきたいと思ってます。
 これまでの、こぶしでの私のやれたことは、まだまだ、不十分で、満足のいかないものも多々あり、中途半端なまま、サポートを交代させていただく方も多くいらっしゃると思います。
本当に御迷惑をおかけしますが、今回の私なりの決断にどうか、御理解をしていただけるとありがたいと思っております。
私の臨床経験の約半分を過ごさせていただいた「こぶし」です。
きっと、「こぶし」の癖が身につき、しばらくは、離れないでしょう。
「こぶし」で学んだことを十分生かし、これからも、「町医者」を目指し、努力していけたら良いなあと思っております。
 「人は時に、立ち止まり、自分を確認することが必要である」と私は思っております。
まさに今回は、私自身、立ち止まらなかったら、こぶしに一〇年近くいたことにも気づかずにいたと思います。
良かったかどうか、分かりませんが、これを機に、もう一歩、進んで歩いてみようと思います。
三月までは、精一杯「こぶし」の一員として、サポートさせていただきますし、その後も、清田の方で、サポートさせていただく方にも、私のできる範囲のことを、一緒に考えながら、やらせていただきたいと思ってます。
 本当に、長い間、お世話になりました。
これから、皆さんにとっての、良い道が見えてきますように、願っております。
私も、こぶしで学んだことを糧にもう一踏ん張りしてみたいと思います。
ありがとうございました。