こぶし

こぶしだより 1999年03月

1999年03月
  発行こぶし編集部
第128号
『虐待の話』
藤田 毅

今回は先日行った虐待に関する講演からの抜粋を書きたいと思います。
虐待と言うとあまり関係ないと思われる方も多いでしょうが、ちょっとした言葉の暴力も虐待と言えなくもありませんし、いじめの現場などで見られる無視や仲間外れも虐待の一種です。
 私たちの日常の意外に近いところで発生し、精神医学上でも重要なテーマであるこの問題を考えてみましょう。

◇児童虐待
 虐待と言うと通常は児童虐待を指すことが多いようです。
インターネットで検索しても(ただし国内のもののみですが)ほとんどがこの児童虐待に関するものです。
 児童虐待は被害者である子供がその事実を隠そうとするために表面化しにくい面もあるのですが、隣家で次のような状況がおきていたときは虐待が行われている可能性があります。

①人を叩く音や叫び声がする、②子供に不自然な傷が多い、③服や体がいつも極端に汚れている、④小さな子供を置いて親が頻繁に外出している、などがサインといえます。
ところで児童虐待にはいくつかの種類があります。

①身体的虐待
 文字通り叩いたり、つねったり、蹴飛ばしたりと体に対する暴力行為のことです。体の傷は時に暴行によるものか、それ以外の原因によるものか判別がつかない場合があります。
②精神的虐待
 馬鹿にしたり、否定したり、怒鳴ったりすることで、子供を抑圧し不安・恐怖を与え、自尊心を踏みにじってしまいます。
③性的虐待
 多くは父親が娘に対して虐待するというように、信頼している人によって引き起こされることがほとんどです。子供はどんな虐待を受けても「きっと自分が悪いのだ」と自分を責めながら信頼すべき大人の愛情を期待し続けるため、表面化せずに長年潜伏することになるのです。時には家庭崩壊を恐れるあまり、母親がその事実を知っていながら何もしないということもあります。 ④ネグレクト(身体的放置、精神的放置)
 ネグレクトとはほったらかすというような意味ですが、親としての義務の放棄のことです。本来、保護者には子供の健康と発達と保護の義務があるはずなのですが、基本的な衣食住の世話を放棄してしまいます。また情緒的な拒絶や無関心もこの放置にあたります。

◇人格のゆがみ
 こういった虐待を受けた子どもたちは当然の事ながら種々の性格的ゆがみや精神疾患を有してしまいます。
怒りや恐れなどの感情を強く持ち、学習障害や孤立を引き起こしたりもします。
対人関係のゆがみは強く、悪夢を見続け、うつ病や摂食障害をおこし、最終的には自殺企図へとつながる子供もいます。
 また、子供を虐待する親(特に母親)には特徴的な性格があるといわれており、
①依存性や受動性が高い、
②衝動性や攻撃性が高い、
③社会的に未熟な状態にある、
④子供の発達についての知識が不足している、
⑤精神疾患がある、などの特性がよく認められます。
 こうしてみると、虐待を受けた子供と虐待をした親との間に類似した傾向があるようです。
そう、
虐待する親もまた、幼少の頃にその親から虐待を受けていたことが多いのです。
このため親から子供へと虐待の心の傷は伝えられ(世代間伝達)、同じような悲劇が繰り返されてしまうのです。

◇母子癒着
 子供は本来精神的な発達に伴って、独立心や自分らしさ(個性)を持つようになります。
しかし親(殊に母親)の過干渉のためにそれが疎外されることがあるのです。
子供の不安と親の不安が妙な具合に補い合い、一見すると安定した状況を作り出してしまいます。
子供は「愛されている」と感じるために、なかなかこの心的外傷(トラウマ)に気がつきません。
こうして子供の成長はタイミングを失い、親に依存しながら年月が過ぎていきます。これも一つの虐待と考えられます。

◇歪んだ対人関係
 これらの虐待による心の傷は、傷を受けていることに気がつかず深く潜行してしまいがちです。
虐待は早期発見が大切な病です。
そして虐待をしている人にも、その行為が虐待であることを気付いてもらわなければなりません。
 そして虐待によって作られた不安定な対人接触や不安定な情緒は、安定した対人関係の中でしか修復し得ません。
次の世代に伝えないためにも、あなたの身近に起きているかも知れない虐待に対して、決して見て見ぬ振りをしないでいただきたいと思います。
 その他、老人虐待やいじめなどについても機会があれば取り上げてみたいと思います。

~~~ 読者の広場 ~~~
<<食のシリーズ 1>>
『食事のかたち』
ネコ吉

 栄養士と言う職業柄、なんとなく料理を見ると、栄養バランスなんかが気になったりする。
私でなくとも、「体に良い食べ物」は皆、気にしていると思う。
 「インスタントラーメンは体に悪い」、「ダイオキシンが野菜に付いている」、「バランスの取れた食事がわからないし、むずかしそう」等々、いろいろ気になるものの、難しそうなので、結局、目の前にある食べ物を食べるしかない。
お腹がすいたから、胃が満たされればイイ。
 反対に、体に良いと聞いた食べ物は、そればかり食べてしまったりする。
それしか食べないという「体に悪い物は食べません」主義の人。
どちらも何か欠けているなあ、なんて思ったりする。
 赤ちゃんに離乳食を食べさせる重要な事の一つに、「楽い雰囲気の中、食事をする。」とある。
「美味しいね」「楽しいね」と語りかけながら、お母さんは笑顔で食べさせるのである。
そうでないと赤ちゃんは食欲不振になってしまう。
大人になったからって、楽しい雰囲気の中で食事をする事の重要性は変わらない。
 でも、現代「楽しい食事」はなかなかしづらくなっている。
家族が集まる時間がなく、集まっても「楽しく」とはいかない。
バランスがいくら良くても、暗い部屋の中で1人ぽつんと、食べるのは体に良いかな?
「何を食べら体にいいですか?」
 私はまず、楽しく食事をしてほしい、と思いつつ、口にはなかなか出せないないでいる。

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お知らせ
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札幌デイ・ケアセンター
講演会
『ゆっくり楽しく
あるがままに生きる』
講師
藤田 毅 先生

日時 平成11年3月26日(金)
受付 13:30
開会 14:00
会場
札幌デイ・ケアセンター
主催
札幌デイ・ケアセンター「講演会」実行委員会
参加費 無料

札幌デイケアセンターでは新しい試みとして、センターOBを交えてのディスカッション形式を取り入れた講演会を開催致します。
講師には、札幌こぶしクリニック院長の藤田毅先生を、
司会には、市立名寄短大看護学科教授の安達克己先生をお招きします。
講演終了後は先生・OBを囲んでの交流会も行います。
多数のご参加をお待ちしております。